2018年5月20日日曜日

e-ラーニングと生講義

我が業界の研修会は、各単位会が独自に工夫して開催されています。それはとても良いことなのですが、傍から見ると、単位会によってはどうしても内容が偏って見えることがあります。
また、どの単位会も限られた予算と限られたマンパワーの中での企画ですから、できることに限界があります。良い講師をお招きしたくても、なかなか実現が難しい事情もあります。

土地家屋調査士会は強制会です。以前から指摘していることですが、所属している単位会により研修の機会や深さに差ができるとすれば、会員にとって大変不幸なことです。

日調連が統一的思想で研修体系を作り、それを電子的なコンテンツとして会員が各自の事務所や自宅でその研修を受講できたら、すべての会員にとってメリットがあります。
実際にここ10年程日調連が取り組んでいるのが、e-ラーニングと言われる研修です。
講義の動画やスライド等の資料をマルチメディアコンテンツとして作り、それを会員にインターネットで配信するのです。それを全国の会員が、都合の良い時刻で都合の良い場所で受講します。会員はそれらを受講することでCPDポイントの附加も自動的にできるようにもなります。
以前からこの取り組みはあったのですが、重い動画も苦にならなくなった最近のインターネット・インフラの充実と普及により、やっと現実的になりました。

日調連もここまではコンテンツを増やすことに力を入れてきたようですが、私はそろそろ将来の制度を見据えた研修体系と教材を再構築する必要があると思っています。


さて、こうなってくると「すべての研修はネット配信ですれば良い」「会員が一箇所に集合して研修受講するのは時間と経費の無駄」という意見が出てきそうです。
実際に日調連の会議でもそのような発言もあったようです。

私は上記の趣旨で「ネット配信で研修すること」について賛成ですが、「すべての研修をネット配信すべき」という意見には反対です。
特に新人を対象とする研修については、集合研修が有効だと考えています。
生講義の力を確信しているからです。

ネット配信研修に対して、研修効果に圧倒的な差をつける生講義が有り得ると思っています。
法律条文や測量技術などの「具体的な知識を伝える」研修は、ネット配信によるものでも伝わるかも知れません。しかし、「根本的なものの考え方を伝える」研修などは、生の講義の方が良いと思います。
私も全国各地で研修講師をする立場として、常にその会場のライブ感を重視して、受講者の反応を見ながら言い方を変えて説明をしています。これが生講義の強さです。
これをテレビカメラに向かって通り一遍の講義をするだけなら、本を読んでもらうのと大差ないと思うのです。

また集合して行う新人研修は、同じ新人同士が同じ会場で出会うことで、希望と悩みを共有して語り合える仲間ができるという大きなメリットがあります。

だから、私はネット研修と生講義による研修と使い分ければ良いと考えています。



「一流の録音より三流の生」
私が楽器を吹いていた頃に、良く聞いた言葉です。
世界一流のオーケストラのCDを聴くよりも、世界では三流のオーケストラでも生演奏を聴けば遥かに感銘を受けるものだという意味です。