2017年7月31日月曜日

総合的な法律脳を身に付けること

土地家屋調査士の後輩と話しをしているときに気になることがあります。
法律的な思考が身についていない人が結構いることです。

確かに私達の業務は、基本的に手続きの業務です。
だから不動産登記法など手続法だけを勉強している人が多いのかも知れません。

しかし、手続き法を理解するには基本法の理解が必須ですし、もっと総合的に法律の勉強をしていないと、お客様の相談を受けるときに相談の裏に流れる本当の問題は浮かび上がらないと思います。
そんなところに、お客様からの信頼感の差が出るのかも知れないと、私は思います。

余談ですが、残念ながらこれは新人だけの問題でもありません。
業界の役員でも、法律脳が無いと思える人がいます。
独りよがりの法改正を提案することを聞くことがあります。
業界のために提案してくれる気持ちは分かりますが、周辺の法律の成り立ちを理解していたら、そんな提案が誰にも受け容れられないものだと気が付くはずですし、もっと上手い提案ができるはずです。

新人も先輩も、新しい条文を読むだけではなく、広く深く法律を学び、法律脳を身に付ける必要があると思っています。


以前書いたブログですが、お時間の有る人は読んでみてください。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



土地家屋調査士試験合格者が読むべき書籍について(2014年12月4日)

今年の土地家屋調査士試験の筆記試験に合格し、今口述試験の合格発表を待っている方からの質問がありました。


(略)

質問したいのは、これから開業までの間に読んでおいたほうが良い書籍ややっておいた方が良い事についてです。

私は5年ほど父の測量事務所で働いております。

ですので測量に関しては少しは知識と実務は経験がありますが、調査士業務については未経験です。


(略)

書籍に関しては現在「表示登記添付情報作成の実務―地積測量図・調査報告情報」を購入し読んでいるのですが、他にお勧めの書籍等があれば教えていただきたいです

(試し見して購入すればいいのですが、大型本屋まで4時間かかるのでネット購入しかできません‥)


(略)

くだらない質問だとは思いますが、専門書の値段も馬鹿にならないのでもしお時間があれば教えてければ嬉しいです

あなたの法律の実力がどの程度か分からないでお答えするのも難しいのですが、測量ができて土地家屋調査士に関する知識が無いという前提でお答え致します。

まずお持ちの添付情報云々の書籍などはいつでも読めます。

実務を始めれば嫌でも調べるのに使うことになります。

ですから今読む本は別にあります。


法律の大きな流れを勉強しておきましょう。

枝葉の部分ではなく大樹の幹の部分を勉強しましょう。

受験で扱った法律、例えば民法などは受験に出そうな部分にフォーカスしています。

受験指導機関もその参考書も、合格のためのものですから偏っています。


だから、今のうちに全体の流れを把握して、法律脳を作っておきましょう。

例えば登記先例を全部暗記するよりも、不動産登記法の各条文がどんな方針でできあがったのか、つまり不動産登記法を貫く大きな手続の考え方を理解すれば、当然に先例の中身が想像できるようになるはずです。

不動産登記法は明治32年制定の古い法律ですが、その後の市場経済や建物の工法の変化に伴い、時代ごとに条文に無い部分を確認するために先例が出ます。

ですから、もし不動産登記法が今年制定されていたら、それらの先例の中身も当然に規則等に含まれていたはずです。

そう考えれば、先例の中身がそんなに不思議な内容になるはずがありません。

幹が正確に理解できれば枝葉は理解できるはずです。


また土地家屋調査士は、お客様から不動産登記手続についてだけ質問を受ける訳ではありません。

各種法律も建築も都市計画も税金も、とにかくあらゆる分野の知識がないと仕事はできません。今のうちに片っ端から読んでおいた方が良いです。

最初の取りかかりは、たとえば宅建の分野の広がりが一つのヒントになるでしょうし、あなたが初心者なら、それらから手を付けたら良いと思います。もちろん宅建資格の勉強ではありません。資格勉強は偏りますので。


様々な分野の本をたくさん読んでください。

各分野で一番良い本を1冊だけ推薦はできません。

あなたがまだ法律書を読み込んでないとすれば、おそらく世間の言う良書とか推薦図書などは、あなたにとって読みにくいものと思われます。

大型書店まで遠いということも理解した上でお話ししています。

これから一生の仕事に向かうために、休日に4時間程度の移動をしても大型書店に行ってください。


私がこの本から読めと言うことはできますが、やはり自分の眼でどんな本があるかを一度見てきてください。

半日かけて大型書店のすべての棚のすべての本の背表紙を見てきてください。

その中で、入門書で良いからあなたが読みやすいと思う本を、同じ分野で3冊買ってください。

1冊読んでも理解しにくいことがあっても気にせずに最後まで読み切ってください。それを3冊読めば大体理解できるものです。

そして、その頃には次に読むべき本が自ずと分かると思います。


気になるのが「専門書の値段が馬鹿にならない」という考え方です。

専門書を何と比較しているのでしょうか。

専門書が高いといってもせいぜい5千円から1万円もあれば買えるはずです。

確かに文庫本よりは高いです。

でも、これらの本は娯楽のためのものではありません。

これから報酬を得るための「仕入れ」です。たとえば、あなたが測量事務所に勤めているなら分かるでしょうが、測量助手のアルバイトを雇ったら一日いくら払いますか?

それも必要経費なら、書籍も必要経費です。


良い書籍は何十年もあなたの仕事を支えます。

他の経費に比べれば、とても安いものだと考えています。

なんらかの目安が欲しいなら、これから5年間仕事に関する本を毎月1万円以上買って読んでください。

少なくても私は33年間、仕事に関する本だけで毎月それ以上読んでいます。


長くなりましたので、続きはまた書きます。

とりあえず動いてください。