2016年11月21日月曜日

シーモアさんと、大人のための人生入門





シーモア・バーンスタイン
89歳
ピアノ教師
一流のピアニストとして活躍しながらも50歳で突然現役を引退
その後をピアノ教師として生きてきて、今なお現役

その彼の生涯を描いているドキュメンタリー映画です。
彼の波乱の人生を見て、彼の言葉を聞き、タイトルのとおり「大人のための人生入門」になるのです。

監督はイーサン・ホークです。
イーサンは、映画監督であり、俳優であり、作家であり、このブログで紹介した映画では「6歳のボクが大人になるまで」「ビフォア・サンライズ」や「ビフォア・サンセット」に出ていました。

イーサン自身が人生に行き詰まりを感じていたときに、シーモアに出会い、彼の演奏と人柄に魅了され、人生のヒントをもらい、これを映画にしようと決意しました。

「音楽の教師が生徒にできる最善のことは、生徒を鼓舞し、感情的な反応を引き出させること。音楽のためばかりではない。人生のあらゆる場面で、重要なことだから」

映画の中のシーモアの言葉ですが、彼の鼓舞は穏やかな品のある語り口で行われます。
ピアニストとして成功した経験、朝鮮戦争従軍中に演奏で慰問してまわったが結局音楽で生命は救えなかったという辛い思い、演奏会に関する様々な思い、それらを経験してきた彼の言葉は示唆に富み、その言葉に触れた人は、何らかの鼓舞をされるでしょう。

「音楽はいっさいの妥協を許さず、言い訳やごまかしも受け付けない。そして、中途半端な努力も。音楽は我々を映す鏡と言える。音楽は我々に完璧を目指す力が備わっていると教えてくれる」

映画の終盤では、シーモアがこの映画のために33年ぶりにコンサートを開きます。そのコンサートのためにピアノを選ぶところも描かれていて、シーモアの音楽に向かう思いが垣間見えます。
とても美しい調べを聴きながら、音楽を通して人生を学ぶことになります。

「音楽に対する最初の反応は、知的な分析なしに起こる。たとえば才能豊かな子供は、音楽の構造的なことや背景を知らずとも、音楽をとても深く理解できる。こうした無知さには、大人も学ぶことがある」

シーモアの友人や生徒達との交流も描かれ、直接シーモアを知っている彼らがシーモアの人柄を語ります。
そして、映画の終盤では、監督のイーサン自身がシーモアと真摯に語り合います。
そのシーモアの言葉と音楽から、イーサンと私達観客は、まさに人生入門するのです。

「人生には衝突も喜びも、調和も不協和音もある。
それが人生だ。避けて通れない。
同じことが音楽にも言える。不協和音もハーモニーも解決もある。
解決の素晴らしさを知るには、不協和音がなくてはならない。
不協和音がなかったらどうか? 和解の意味を知ることもない」

全国的にも上映館は少ないようです。
仙台ではフォーラム仙台で今週中上映しています。
機会が有れば観ても良い映画だと思います。