2015年11月3日火曜日

研修会におけるスライドの使い方

先日は研修会講師に関する私の考え方(研修会で盛り込み過ぎは禁物と考えていますを書かせていただきました。今日は研修会でよく見るスライドの使い方について書かせて戴きます。

私が研修を始めた20年程前に、自分の説得力を補うためにプレゼンテーションソフトのスライドを使い始めました。
世間があまり使っていない頃でした。会場にプロジェクターの準備をお願いしたら、レンタル代で1日7万円かかったとお聞きして、恐縮した記憶があります。

今は研修会でキーノートやパワーポイントのスライドを利用することが当たり前になりました。むしろスライド無しの研修を見ることが少ないですね。

さて講師として長年スライドを使ってきたので、これから講師をする人に、私なりに感じていることをお伝えしたいと思います。
他の講師を指導できるほど講師のスキルがあるわけではないですが、他の研修を受けていて残念に思うことも多いので、ここに書いてみます。
あくまでも私なりの考えであることをご理解の上、お読みください。

1、スライドを使う意味

上記のとおり誰でもスライドを使う時代なので、逆にスライド作成を義務と考えて、別に無くても良い内容のスライドを作成する人がいます。
スライドは何のために使うのでしょうか。
研修に効果があるから使うのに、講師にとって何らかの作成義務のような思いで作成するなら、おそらく意味がないでしょう。
スライドは、研修効果を考えて、資料だけでは説得しにくい部分を補う為のものです。
それを考えないのなら、無理にスライドを使わないほうが良いでしょう。
この時代、スライドを使わないというと、逆に達人っぽい雰囲気を醸し出せるかもしれません。
ちなみに話が脱線しやすい講師にとってはタイムキーパー的な役割を持つという意味はありますが。

2、スライドの表現

スライドに文字をたくさん書き込む人がいます。
見ただけで黒っぽいスライドです。
基本的に間違っています。
スライドは読むものではありません。
長年受講者としても研修会に参加していると、すぐに次の画面に切り替わるスライドの文字を読ませられるのは、とても忙しく苦痛であり、むしろ講義に集中できない可能性があります。それなら手持ち資料として配布すれば良いだけです。
長い文章や条文を解説するために載せるなら、それはそれで結構ですが、それにしてもやはり配布資料との関係をしっかり考えて、なぜスライドなのか考えて利用すべきです。
どうしてもスライドに書き込みたくなる人は、むしろスライド使用を一旦止めて、配布資料を充実させた方が良いかもしれません。
そうすることで逆にスライドの使い方が分かるかもしれません。

3、アニメーションの使い方

研修内容にもよるでしょうが、アニメーションの多用は止めて欲しいです。
パワーポイントやキーノートを使い始めの講師に有りがちの現象です。
20年ほど前の私のスライドも今の私の基準で振り返るとアニメーションが多かったようです。反省しています。
アニメーションは配布資料では表現できない方法で説明ができる効果的なツールです。
ただし受講者側から見ていると、講師側の自己満足的な使われ方が多いようです。
アニメーションが多いと講義の本筋に集中できないなどの弊害すらあります。
アニメーションでないと伝わり難いことは何かを精査して、スライドのアニメーションを整理する必要があると思います。

4、スライドの事前配布

スライドをそのまま縮小して印刷し、レジュメの一部として事前に配布することが多いですね。
私の研修では絶対にやりません。
あれは次の展開が手元でわかりますので、受講者が前を向かず、下を見始めます。
しかもスライドが手元にあるから、帰ってからでも見ることができる安心感で、その日の研修に集中しないことがあります。
後でも確認できる研修資料は別に作成し、スライドはその資料を読むときの指針を伝えるために使うべきです。


意見が違う人もいるかもしれません。
ただ私がどうしても言いたいのは、研修会は講師のパフォーマンスの場ではなく、受講者のための場だということです。
講師に選ばれる方は、元々その分野の能力が有るのですから、その部分の研鑽は問題ないはずです。
ですから研修会までに講師がやることは、どうすれば研修会という限られた時間と場所で、一期一会の受講者に如何に分かりやすく伝えることができるか、先日のブログで言う「共感」までいけるのか、この点の工夫に全力を尽くすことです。

研修会は講師のものではなく、あくまでも受講者のためのものですから。