2014年11月28日金曜日

レッド・ファミリー

韓国映画「レッド・ファミリー」を観てきました。


第26回東京国際映画祭で観客賞を受賞したとのこと。
観客の心を掴んだと言うことだが、とても理解できるものです。


北朝鮮の4人の工作員が演じている仲睦まじい理想的(偽装)家族の物語。
北の工作員達は、その隣人である喧嘩の絶えないダメな韓国人家族を「資本主義の限界」と馬鹿にしていた。

前半は、その2つの家族の対比によるブラックな笑いが生まれる。
そして観客が笑っている間に、本国からの指令により重いミッションも次々と並行して進む。

やがて工作員達は隣人家族と触れ合ううちに、自分たちの任務や人生に疑問が生じて来る。
ストレートな感情をぶつけ合っている家族が本当に羨ましくなってくる。
しかし工作員達は、監視もされているし、国に残した自分の家族のためにも、一瞬迷うことすら許されない。

果たして、自分達の家族を守るために、他の家族を殺すことが任務なのか。

先のストーリーが想像できない展開で進む。
そして考えてもいない、切なすぎるクライマックスが待っている。

南北朝鮮の問題を扱った映画は傑作も多い。
韓国映画では外せない大きなテーマである。
この映画は「シュリ」「JSA」等のような目を覆いたくなる壮絶なシーンはない。
ただでさえ重いそのテーマに笑いを持ち込み、しかしその笑いが南北の差から来るものであることに気が付かされる。
そしてクライマックスのシーンでは、「その笑えるセリフが裏返しになると、こんなに泣かせるセリフになるのか」という、とても驚かされるシーンを見せられる。
これは見た人でないと分からないが、この脚本は凄いと思う。

話しの展開には、かなり無理のある部分もある。
この家族の真のリーダーである妻の途中の重要な判断と行動は、どう考えても有り得ないと思う。
他にもいくつかの細かい「スッキリ」しない点がある。
でもそれは問題ないと思うし、いちいちネタバレしながら解説するまでも無い。
この映画はそんなことに突っ込んでいると本質を見ないでしまうタイプの映画だと思う。



誰にでもお勧めとは言えません。
韓国映画が苦手な人がいるでしょう。
南北問題が重くて観たくないという人もいるでしょう。
でもそのようなリアルな政治問題を一旦置いて、エンタメとして観ても良い映画だと思います。