2014年10月30日木曜日

その根拠はなんですか?


先日、土地家屋調査士の新人に不動産登記手続の指導をしていて、その手続に関連する法律の根拠を尋ねてみました。
そうしたらその新人は、ある資格受験予備校が出版している受験参考書の中の記載を根拠として挙げてきました。
一応中身を見せてもらいましたが、それは著者の独自な判断が書いてある部分でした。
著者の独自な判断は受験本ではなおさら問題が有るような気がしました。
まあどちらにしても、私達が根拠に挙げるべきなのは法律条文や判例・先例であって、誰かの個人的な判断や意見ではありません。

裁判の場面や登記官とのお話の中で、受験参考書を持って行っても相手にされません。
もちろん受験参考書を馬鹿にしているのではありません。
もともと目的が違う本だからです。
受験参考書は読者を合格させるための本ですから、迷いを避ける目的で敢えて触れない部分や、試験問題の傾向に合わせて書いている部分もあるのです。

合格させて戴いたその本に対しては感謝をしながら本棚にしまって、プロの資格者としては別の勉強を始めなければなりません。
もう一度法律を体系的に勉強して、しっかり身に付けるべきです。

もちろん、Wikipediaなども手軽で参考になるかも知れないけれど、対外的な根拠にはなりません。いちいち謙虚に六法や基本書にあたりましょう。

また新人に、ある法律の条文について聞いてみたら「それは土地家屋調査士の範囲ではありません」という答えをもらったことがあります。
その新人は完全に間違っています。
「それは過去土地家屋調査士試験に出題されることがなかった」というだけのことです。これからも出題されないかも知れませんが、間違いなくそこも知らなかったらプロの土地家屋調査士はやれません。
今までやっていたことは、所詮試験のための勉強だったということを再認識して欲しいのです。

これは新人だけでなく、先輩達にも言えることです。
先輩達は経験を積んでいるので、経験則で大抵のことは答えられます。
しかし専門家として一番求められる限界事例などはしっかり勉強しておかなければ答えられません。
経験則だけで、登記官に対して「前回の登記官は通してくれた・・・」などという恥ずかしい根拠は言わないようにして欲しいものです。

大きな幹を理解しなければ、そこから伸びた枝葉は正確な理解はできません。
また枝葉を正確に理解するからこそ、再度大きな幹を理解できるのだと思っています。

頑張りましょう。