2014年4月21日月曜日

土地家屋調査士白書2014を考える

発刊されましたね。
土地家屋調査士白書2014


今まで業界に白書がなかったのですから、初刊発刊については敬意を表します。

さて、日調連の皆さんは、発刊して満足しているようです。そして全国のまじめな会員は、誰にも頼まれないのに自分で進んで購入したことに満足しているかも知れません。
ではすべて良かったのでしょうか。
いいえ、私は違う意見です。

まず白書とは何でしょうか。

世界大百科事典(第2版)では以下の解説が示されています。
はくしょ【白書】
政府が国政の各分野の現状と課題をひとまとめにして報告書の形で広く国民に提示する公文書。この言葉の由来はイギリス政府が外交の内容を国民に知らせるために出した文書の表紙が白かったところから白書white paperと呼ばれるようになった。以来,政府(行政府)の公式報告書を一般に白書という。これにたいしてイギリスの議会の報告書は青表紙がついているため青書blue bookと呼ぶのがならわしである。 日本では片山哲内閣が1947年7月経済白書(都留重人執筆の《経済実相報告書》)を出したのが始まりで,〈財政も企業も家計も赤字〉と当時の経済の危機的〈実相〉を伝えた。

三省堂 大辞林
はく しょ 【白書】
〔英国政府の報告書が白い表紙をつけ white paper と呼ばれるところから〕
政府が,外交・経済など各分野の現状を明らかにし,将来の政策を述べるために発表する報告書。

今まで白書が無かったと言うことは、日調連の政策が内外に対する説得力に欠けていたかも知れません。ですから初刊の発刊は意味が有ると思います。
ただし、土地家屋調査士白書は、土地家屋調査士の制度に関する日調連の戦略のために、統計に裏打ちされた現状とその分析を会員を含む国民に報告し、新たな政策を打ち出す為の根拠でなくてはなりません。
では今回の白書の編集はその目的に照らしてみると、どう評価されるべきでしょうか。
今回の白書の目次を見てみましょう。
以下のとおりです。

第1章 日本全国あなたの近くの土地家屋調査士
 1 全国の土地家屋調査士人口
 2 土地家屋調査士試験受験者数、合格者数及び合格率等
 3 都道府県別人口と各法律専門職等士業人口

第2章 日本経済に貢献する土地家屋調査士
 1 不動産登記事件数の推移
 2 土地の表示に関する登記事件数の推移
 3 建物の表示に関する登記事件数の推移
 4 土地家屋調査士とオンライン登記申請
 5 参考資料 国土交通省「土地白書」から
 6 公共嘱託登記

第3章 日本社会に寄り添う土地家屋調査士
 1 土地家屋調査士会が運営するADR センター
 2 筆界特定制度
 3 土地家屋調査士による社会教育活動
 4 土地家屋調査士会等による全国自治体との防災協定

第4章 自らを省みる土地家屋調査士
 1 土地家屋調査士の登録
 2 懲戒処分

第5章 研鑽し続ける土地家屋調査士
 1 土地家屋調査士特別研修とADR代理関係業務認定土地家屋調査士
 2 土地家屋調査士会による研修会

第6章 研究し、発信し続ける土地家屋調査士
 日本土地家屋調査士会連合会の「研究所」について

第7章 仲間を支え合う土地家屋調査士
 1 全国の土地家屋調査士会
 2 日本土地家屋調査士会連合会組織について
 3 全国土地家屋調査士政治連盟の誕生

第8章 進化を続ける土地家屋調査士
 1 国際地籍シンポジウムの開催
 2 地籍問題研究会
 3 土地の筆界に関する「地域の慣習(地図等の歴史的資料類)」の研究

第9章 土地家屋調査士が歩み続けた道
 1 土地家屋調査士制度の誕生
 2 日本土地家屋調査士会連合会の歩み並びに土地家屋調査士制度及び不動産登記制度の変遷

東日本大震災と土地家屋調査士
 1 各土地家屋調査士会との連携
 2 日調連、各土地家屋調査士会による被災者支援活動
 3 土地家屋調査士の大震災の教訓
 4 土地家屋調査士による復興支援

土地家屋調査士を多面的に紹介しようとしている姿勢が見えます。
そうなんです。「紹介」なんです。
すべてのタイトルにも「〜土地家屋調査士」が付いていますね。
これは「白書」ではなくて「広報誌」に見えます。
所管は広報部だったのでしょうか。

あらゆる組織にはグランドデザインが無ければなりません。
そのグランドデザインをベースに、組織の未来のための戦略を考えるのに必要なものが統計です。そしてその統計を分析しながら更に戦術を立てていくものです。
そのツールとして白書が存在します。
白書を見れば、その組織のグランドデザインが透けて見えるはずです。

1を10に改良するのは10倍ですが、0を1にするのは無限大です。
だから、初版を刊行した日調連の担当役員には敬意を表します。
でも、白書は「目的」ではなく「手段」です。
白書初版刊行で喜んでいる問題ではないのです。

この組織、政策も、広報も、研修内容に至るまで、「目的」と「手段」が混同されているように見えます。
これは日調連だけの問題ではありません。単位会も会員も変わりません。
枝葉末節だけではなく、空まで伸びる樹木の太い幹の話しを皆で語りたいものです。