2012年7月31日火曜日

女川町被災調査 仮設住宅動画

宮城の大半はすっかり復興していると、全国の皆さんは理解されていると思います。
しかし、昨日のブログで紹介したがれきの堆積でお分かりでしょうが、海辺の町はどこも、しばらくあのままです。
元の町に戻るのは何年もかかるでしょう。

「被災地は震災バブルだ」という報道で、全国に誤解が生じ、支援活動が止まったことがありました。あの報道した人達には責任を感じて欲しいと思っています。

昨日のブログの動画が、現状をお伝えする手段として、分かりやすかったようです。
やはり写真で紹介した以上の反響が来ています。

もう一つ動画を見てください。
仮設住宅です。

画質を落としてファイルを小さくしたので、少し見づらいかも知れませんが、全体を見る目的であるとご理解の上、ご勘弁ください。
女川町仮設住宅(石巻市沢田・石巻バイパス用地)の映像です。





どれだけの数の方々が仮設住宅で不自由しているのか、少しは伝わるでしょうか。
狭い間口の入り口をご覧になって、何世帯が暮らしているのか伝わるでしょうか。

土地家屋調査士の仲間の皆さんなら、ちょっと見ただけで、この住宅の狭さと、暑さが分かると思います。
このような仮設住宅の一団が、岩手、宮城、福島に本当にたくさんあります。
ですから、これだけご不自由されている方々が、東北には実際たくさんいます。

昨日紹介したがれきが片付かず、政府が明確な指針を出さなければ、この仮設住宅から引っ越しができません。しかし、仮設はいつまでもいられる訳でもありません。
ここに仮住まいの皆さんは何を希望にすれば良いのでしょうか。


仮設住宅にお住まいの方々は、発展途上国の経済難民ではありません。
世界の先進国の皆さんと同じ日本人なのです。








2012年7月30日月曜日

女川町被災調査 がれき動画

今日も女川町に被災調査に行きました。
何度も書いているように、女川は何も変わっていません。

以前のブログでも写真で紹介していますが、宮城県以外の方々には写真ではピンと来ないようです。
写真を見ていると丁度被写体の有る部分を撮影しているように思えるのでしょうね。

今日は動画を入れてみましょう。
動画により被災被写体の広がり、連続性を少しでもお伝えできるでしょうか。

例えば以下の動画を見てください。






この「がれき」の山の場所は、もともとの産廃処理場ではありません。
以下の住宅地の中です。上記動画の車は、赤矢印のとおり走りました。
皆、個人の所有権のある宅地です。

女川町の特殊なところを切り取って撮影しているのではありません。女川町は至る所このような状態です。

このブログを見てくださっている全国の皆さん、もしあなたの所有地が震災に遭い、1年4ヶ月以上このままだとしたら、何を思うでしょうか。



被災すると、そこには住めません。
住んでないから、緊急工事の優先順位は下がります。
いつ、この町が美しい町に戻ることができるのでしょうか。


以下の動画も見てください。
女川の漁業関係施設がたくさんあった地域です。
これは5月27日撮影の動画ですが、昨日現在でも何も変わっていません。
とても悲しいです。








2012年7月28日土曜日

東京公嘱協会墨田支所との合同研修会

本日7月28日、(社)東京公共嘱託登記土地家屋調査士協会墨田支所の皆さんと(社)宮城県公共嘱託登記土地家屋調査士協会仙台支所の合同研修会が開催されました。

まず、墨田支所の丸山晴広副支所長から「墨田区における災害支援について」という発表が有りました。
墨田の地域は、関東大震災や第二次大戦の大空襲の被災も経験していることもあり、災害に対する防災意識もとても高い地域だそうです。

確かに墨田支所は不登法第14条地図作成でも地籍調査でも実績の有る支所であることは知っていましたが、今回のご説明をお聞きして、防災にもとても意識が高い方々だと改めて思いました。

その後で私が「東日本大震災と土地家屋調査士のできること」と題しまして、少しお話しをさせて戴きました。全国からご支援受けた御礼と、震災後の組織の動きの報告と、被災地の土地家屋調査士として考えたことと、その問題点等を発表しました。

それに続いて「建物滅失調査について」「土地実態調査について」「その他(震災関連業務)」を鈴木洋一公嘱協会副理事長が発表しました。今回の震災で、公嘱協会として受託した復興事業の具体的説明です。

墨田支所の皆さんは、明日震災の被災箇所を現地視察されます。三嶋元志墨田支所長によると、「今回は観光無しで勉強だ」と宣言して来られたそうです。
確かにとても意欲的に準備されてきまして、ネットで取れる資料はもちろん、そのデータを事前に分析加工して、かなりの準備をされて来仙されました。

全国で意識の高い土地家屋調査士会が地域の自治体と防災協定を結んでいます。また今、結ぼうとしています。墨田の土地家屋調査士も同じく意識が高いので、まさにその動きの最中です。

そこで、私がいつも申し上げておりますことを、アドバイスさせて戴きました。
「震災が起こったら、協定を結んでいる調査士も動くことができないかもしれない。
墨田が被災したときは、墨田の調査士も被災者になる。
被災時には平時で考えていることの半分もできないかもしれない。できれば、もっと広域的に調査士が連携して協定を結んだ方が良い。」というものです。
水を差すつもりはありません。本気で地域のために働くためにも、上記の視点を持って計画をした方が良いと思うのです。

今回の合同研修会が、万が一関東直下型の震災が起きたときの、少しでも備えになれば良いと願います。




2012年7月27日金曜日

オリンピックが始まった

4年に一度のオリンピックが始まりました。今回は世間的にもあまり盛り上がっていなかったように思えますが、始まればやはり楽しい一大イベントです。
開会式前にサッカーが始まり、2日続けて寝不足になり始めています。

なでしこジャパンも、ノーマークだったワールドカップ制覇の時と違い、ディフェンディング・チャンピオンとして今回は研究されての戦いですから、かなり苦戦をすると思っていました。

しかし、初戦のカナダ戦は、内容も良く勝ちました。
カナダも研究して来たことが良く分かる戦いをしてきましたが、澤の復活、大野と川澄のINAC連携ゴール、「我がベガルタ仙台の鮫島」のアシストによる宮間のゴール等々、とても良かったです。

男子のサッカーは、欧州選手権2連覇のスペインが相手、スペインは優勝候補でもあります。まともに戦って敵わない相手に日本はどう向かうのか。
関塚監督は日本のスタイルを貫くのか、現実的に決勝トーナメントに行くために勝ち点1を狙うのか。私は試合前に考えていました。

始まってみたら、全員がよく走り、前線からよくプレスし、何度も高い位置で奪取し、決定機を何度も作っていました。オーバーエイジ吉田も良く効いていました。

そしてセットプレーから大津が1点を先取し、チームは守りに入らずに最後まで攻めて、なんとスペインから勝ち点3を取りました。

関塚監督を信用していない私でしたが、まったく想像していない素晴らしい結果を見て、「少しだけ」監督を認めることにしました。

日本の男女のサッカーは相手より走るサッカーです。
1体1では力の差がある弱いチームは、考えながら相手より走って数的優位を作り、局面毎に集団で勝つしかないのです。我がベガルタ仙台も、この戦い方です。

ちなみに私、弱いくせにまったく走る気がない業界を知っています。
あの業界も、心をひとつにして皆で走り始めると、優勝候補にも勝てる面白い業界になると思うのですけどね。

さて、しばらく寝不足が続きそうです。









2012年7月26日木曜日

スワンタッチ

スワンタッチという文具があります。
存在は知っていましたが、そこまで便利かなと思って、私は購入していませんでした。

ところが、先週末福岡会に講師でお伺いした際に、浦志副会長から戴きました。
私が文具好きで、読書好きであることをご存じで用意して戴いたようです。
ありがとうございます。


スワンタッチとは、いわゆるブックマーク(しおり)です。
そう言われればスワンの形をしています。
本の末尾のページに剥がせる両面テープでセットします。
そのスワンの嘴にあたる部分を読んでいるページに挟みます。




本を読み進めてページをめくると、この薄い嘴の部分が開いているページに移動します。
そのまま閉じても、改めてしおりを挟み変える作業が不要になります。

この本のページを傷めない薄くて柔らかで弾力のある形状に作るのには、我々が思う以上に技術が必要なのだそうです。実際にプラスチック板をくり抜いて作っているのではなく、鉄の金型にプラスチック溶剤を流し込んで作っているとのこと。
このスワンタッチの開発について調べてみますと、板橋の職人さんのこだわりがあるんですね。

私も、本来優雅に読書時間を取りたいのはやまやまですが、早く家に帰って、落ち着いた広い書斎で、ブランデーを片手に読書する夢は、とうに捨てています。
もっとも私は酒に弱いので、ブランデー片手の段階で、本は読めなくなるでしょうが。

ですから、私はもっと細切れの時間で本を読んでいます。
実際に私のように2分有ったらその本を開き、すぐに閉じて次に向かうというような本の読み方をしていると、瞬時にしおりができるこの製品は、とても私に合っていることに気が付きました。

今後は、このスワンタッチを使おうと思います。

それにしても全国の仲間に、文具好きと知って戴くと良いことがありますね。
もう少し言ってみましょうか。

実は私○○も好きなんです(笑)





*追記)
この商品、Amazonでは158円でした。(7/26現在)
上記の写真で760円+税とあるのは、本の値段です。
紛らわしくて失礼しました。

2012年7月25日水曜日

日本の1/2革命

あの池上彰氏と、「小説フランス革命(全12巻)」を刊行中の西洋歴史小説家である佐藤賢一氏との対談「日本の1/2革命」を読みました。
これは大変面白かったです。


佐藤氏によると「フランス革命は前半と後半の2段階のものだった。」とのこと。そう解説されると、確かにフランス革命の陰と陽を理解しやすいと思います。

「革命の前半は「自由・平等・友愛」を掲げ絶対王制を倒し、その後の市民社会や民主主義の元になったものですが、革命の後半は国王を殺してしまい、結果的に共和制になったが、ただ暗い歴史になってしまった。」と説明します。

この部分を佐藤氏は何度も詳細に語ってますし、池上氏はさすがに適切な言葉を選びながら、佐藤氏の説明を促していきます。

このフランスの革命が他国の革命にも少なからず影響を与えたということで、イギリスの革命にアメリカの独立戦争、そしてロシア革命などにも言及します。

でもこの本の最初から最後まで一貫してそれと対比しているのが、日本における革命です。たとえば明治維新を挙げています。

「日本における明治維新の革命は、フランス革命で言う前半だけの革命であり、後半部分は無い。」とし、これを「1/2革命である。」というのです。
「実際に、日本の明治維新を成し遂げた革命家は、一般市民ではなく、侍階級であった。そしてそれは将軍も天皇も殺さない革命であり、ソフトランディングな革命であった。」
「そう考えれば、日本の革命は、敗戦後のGHQ改革、1960年の安保反対デモ、1968年の全共闘運動、そして2009年の政権交代も、やはり1/2革命であったと言える。」

「何故日本人は1/2革命で終わったのか。最後まで行かなかったのか。または行けなかったのか。」

佐藤氏は続けます。
「日本人は、本気で怒り自ら改革することを放棄し、英雄待望論が強い。」とも言ってます。
それは「自分たちが自ら動いて成功した体験が無いからだ。」と、つまり「フランスと違って「やればできる」の成功体験が無いからだ。」と、分析します。明治維新もGHQ改革も、自らの改革ではなく、外圧により改革を迫られたものだからです。

「フランスの人達はなにかというとデモを起こすけれども、日本人はあまりやらない。それは、デモなんかやってもどうせ無駄だと最初から諦めているからだ。」
そう佐藤氏は言います。

そして本の最後に、「東日本大震災後の未曽有の危機は、歴史的に見ても革命前夜の様相である。」と言い、「その危機に直面する日本人は、まだ我慢を続けるのか、それとも後半の1/2革命に望むことになるのか」と結びます。
対談内容が最後までとても面白く読めました。

日本人が自ら怒ることを忘れ、ただ英雄を待っているという説明は、昨今の日本人をよく表していると思いました。

これは我々の狭い業界でも感じます。
少なくても他の人達よりは自分で未来を開く指向の人間だから、専門家として個人事務所を開いたはずなのに、いつの間にか「どうせ・・」と言う人間になっている、そんな人が確かにいます。

フランス革命の新たな視点を示し、それに池上氏の的確なコメントが絡み、日本の過去から現在までフランス革命との対比として言及しています。

この本は面白かったです。お勧めです。



2012年7月22日日曜日

技の伝承について

先日の「コミュニケーションが苦手な業界」について、下記のコメントを戴きました。
佐藤様にはコメント感謝します。
返事を書かせていただきたいと思いましたが、コメント欄としては少し長くなりそうだったことと、読んで同じ思いをされた人がいらっしゃったら、大変申し訳なく思いましたので、もう少しここで私の考え方を書かせていただきます。

<戴いたコメント>

愛媛会の佐藤です。まだまだ大変な時期だと思いますが、遠くにいますが心は一緒に感張りたいと思います。

さて”俺の技を見て盗め”は私も言われ、後輩や補助者にも言ったことはあります。
この言葉の意味には、技を磨いてきたその人の態度、姿勢、思いなど、深いところでは人生をも含んでいるのかもしれません。
ある言葉を理解するとき、思考だけでなく心で感じるものもあるように思えます。
余計なことで失礼だったかもしれません。ただ、先人が残した言葉の面目を保つために一言。

<返信>

佐藤様
コメントありがとうございます。
また被災地に対し、ご配慮戴いて感謝します。

先日のブログの私の文脈からご不快な思いをされたなら大変申し訳なく思います。
そもそもコミュニケーションについて書いておきながら、不用意な表現で読んだ方に思いを伝えられないなら、私自身がこのブログを書く資格は無いのかもしれません。
お詫びを兼ねて、もう少し私の考え方を書かせていただきます。

もちろん、この言葉の真の意味は知っているつもりです。
佐藤様のおっしゃるとおり、後輩達に伝えるべき技とは、技術だけでなく、魂、生き方も含めたもので無ければならないと思っています。
これは、どんなに言葉を重ねても、他人に伝えきることがとても難しいもので、おそらく見て学ぶ部分は必要なのでしょう。

でもだからと言って、言葉は尽くすべきだと思っています。
たとえ技を伝承する相手が一人であっても、最初に体系的な指導計画を立て、その計画に基づき、言葉を尽くして教えて、それでもその先に「見て盗む」というところが有ると、私は思っています。まあこの『盗む」という表現も好きではありませんが。

お気に触ったら申し訳ありません。
全国の真摯な職人気質の方々を中傷するつもりではありません。

ただいつも、我々の世界は道を究める努力をしているだろうか、そしてその道を本気で後輩に教える努力をしているだろうか、と思っています。
後輩に本気で伝えて行かなかったら、我々の業界が廃れてしまうと思っています。
その部分を書きたかったのです。

私は「60点の人は50点、40点の人の役に立てる」と考えて、いつも動いています。でも、私の持っている僅か60点の部分だけでも、見てもらうだけでは伝わらないと思っています。
ですから、なんとか後輩に伝えようと努力しています。

私が本を書いたり、毎週のように休日返上し、全国に伺ってお伝えしようとしていることは、まさに土地家屋調査士の魂や生き方も含んだものと考えています。

おそらく佐藤様は、このコメントをくださっているくらいですから、本気で後輩達に自分の技を伝えていることは間違いないでしょう。表現の仕方が違うだけで同志だと思います。また懲りないでブログにお付き合い願いたいと思っています。





2012年7月19日木曜日

コミュニケーションが苦手な業界

土地家屋調査士は、比較的コミュニケーションが苦手な人が多いようです。

「そんなことは無い。俺は友達が多い。いつも楽しくコミュニケーションをとっている。」とおっしゃると思いますが、相手が初対面で、しかも好意的に聞こうとしていない他人に対しても同じでしょうか。
土地家屋調査士は、素人に説明することがとても下手です。
最後には専門用語で逃げようとする人が多いようです。
もし「法〇〇条により・・・」と言い出す人がいたら、法律という権威で自らの説明義務から逃げようとする人だと、私は思うのです。相手は法律を学びたい訳ではないからです。

先生と呼ばれる専門家は、へらへら話をするものではなく、寡黙な方が権威があるように見えるなどと、落語「代書屋」で紹介されていますが、今の時代では間違いだと思います。専門家は素人に難しい専門分野を分かりやすく説明して、国民に安心してもらう義務があるのです。

また、変に職人気質を気取る人がいます。補助者や後輩に物事を教えるのに、「俺の技を見て盗め」などと言い出したりします。これにはいつも「あなたの技は見ただけで盗めるのか?」と聞きます。おそらく、その人は説明する気がないか、説明する能力が無いのでしょう。

専門用語を使わず易しい言葉で説明することは、最終的には語彙力の問題だったり、言葉を選ぶセンスの問題だったりしますが、基本的に理解して欲しいと心から思ってお話をしていれば、ある程度センスは磨かれてきますし、使える語彙も増えてくるものです。
私は後輩にいつも「相手を地権者と思わずに、自分の祖父や祖母だと思いましょう。自分のおじいちゃんやおばあちゃんが、そんな言葉の説明で本当に理解できると思いますか?」と言っています。

また、土地家屋調査士は、文章を書くこともとても下手です。このブログの様な雑文の話ではありません。文章による報告や説明が下手なのです。おそらく、いつも図面を提示して一目瞭然という癖がついているからでしょう。これは訓練ですぐに要領が掴めるでしょう。問題は訓練する気があるかですが。

お客様とのトラブルの大半は、コミュニケーション不足によるもののようです。
もう少し我々はコミュニケーションに努力を払う必要があると思います。




2012年7月17日火曜日

ACB あいち調査士勉強会

7月14日はACB(あいち調査士勉強会)の全体研修会に講師としてお招き戴きました。
研修テーマは「土地家屋調査士の夢と青年の権利と義務」としました。

夢を持ってこの世界に入ったはずなのに、卑屈になっていないか。
卑屈になる必要はない。悩む必要はない。問題ない。
もう一度夢を確認しよう。その夢の実現の仕方を具体的に教えるから。
そして君たち青年は、皆で前を向いて調査士の未来に対して動く権利もあるし、義務もあるんだ。


このACBは愛知県の若い調査士が中心の任意の勉強会であり、他の会で言えば、「青調会」にあたるものです。
ACBは発足時から会員数が多く、今回の様な全体研修会の他に、10人程度にグループ分けして、各グループ毎にもテーマを持って勉強会を開催しています。
以下ACBホームページより。

第1グループ
「不動産登記制度の沿革について」
温故知新。
土地家屋調査士として知っていなければならない知識を身に付ける場にしたいと考えます。 第1グループでは先輩調査士の知識や経験を承継し、我々の時代に繋げられるよう、登記行政や地図行政の歴史を踏まえ、訴訟に耐え得る知識の習得を目指します。

第2グループ
「調査士の測量について」
街区基準点や登記基準点が街のいたる所に設置されたことにより、土地家屋調査士の行う測量は年々難しくなっています。 私たちは筆界点を立ち会って確認する仕事から、筆界点を地図上に登録する仕事になっているのではないでしょうか。 自分の作成した地積測量図が胸を張って地図上に登録されるものになるように、一緒に勉強会グループで学びましょう。

第3グループ
「裁判事例、判例の研究について」
土地家屋調査士の業務として境界を調査測量していく上で、私たちは境界確定訴訟を起こされるというリスクを常に負っています。弁護士の考え方及び過去の判例の考え方を学びながら、信頼され、自らを守る土地家屋調査士であるために皆さんと共に勉強しましょう。

第4グループ
「筆界特定制度、ADR、筆界鑑定の研究について」
昨今は、境界紛争問題を耳にする機会が多くなり、我々土地家屋調査士が境界に関する紛争の予防及び解決を実務につなぐことが、今後ますます重要な責務だと思います。
そこで、本グループでは筆界特定制度、土地家屋調査士のADR、筆界鑑定の制度や事例等を自ら積極的に研究していただくことにより、真の筆界の専門家を目指すひとつのきっかけになればと考えます。

第5グループ
「経営能力を身につけた土地家屋調査士になろう」
我々土地家屋調査士は資格者として事務所を構え、日々の業務に勤しんでおりますが、資格者であると同時に大半の方は経営者でもあるものと思います。 技術や法律知識を学ぶことも大切ですが、経営の知識もまた我々にとって事務所運営を行う上で不可欠であります。 共に学び、しっかりとした経営能力を身につけられる勉強会グループとすることを目標とします。

第6グループ
「日常業務について」
土地家屋調査士は、建物専門の土地家屋調査士でない限り、立会を業務の一部として行っていますが、立会については様々な疑問点、問題点を各自で抱えているのではないでしょうか? なかなかこれが最適だという立会方法はないとは思いますが、グループメンバーで今までの経験を発表しあい、議論しあいその情報を皆で共有し立会について学んでいきましょう。

第7グループ
「調査士をとりまく関連法律について」
土地家屋調査士は弁護士と比し、「隣接法律専門職」と位置づけられています。実際に業務をはじめれば、不動産登記法はもちろん、さまざまな関連法律の知識が必要とされます。 我々は「隣接法律専門職」として十分な知識と技術を備えているでしょうか?
第7グループは、業務に関連する法律知識を能動的に研鑽する場として、立ち上がりました。まずは土地家屋調査士法を熟知することから始めたいと考えます。

良いですね。素晴らしいですね。
とても意欲的です。
この10人前後の分科会方式の勉強会は、受け身だけではなく、全員が発言する機会も多いでしょう。自ずと身に付く勉強会になるはずです。

さて、新しい勉強会組織で一番難しいのは、継続性です。
最初は皆、様々なことへの渇望により意欲的に始めますが、お互いがだんだん忙しくなると、日程が合わないという言い訳により、延期が多くなります。全国では自然消滅した勉強会も数知れません。
これらの勉強会が、お互いに負担にならない程度で、楽しく、長続きのする勉強会であって欲しいと願いますし、このまま10年継続すれば、そのときは自分たちだけでなく、周りの調査士の世界も変えていることと思います。

私も継続的に応援したいと思っています。




2012年7月16日月曜日

東北ブロック総会

毎年7月に持ち回りで開催される東北ブロック協議会の総会は、今年7月12日〜13日に山形で開催されました。この東北ブロック総会は半時計回りで開催され、昨年は秋田で、今年は山形で、来年は福島で開催されます。

東北ブロック総会については、一昨年の7月12日のブログで、少し説明しました。
東北ブロック協議会は、このブログでも紹介したように各会の情報交換が主目的の組織となっています。
他のブロックではブロックに資金を集めて、ブロックに研修や広報等の担当理事を置いて、ブロック独自の活動も盛んな所もあります。
会員数が少ない東北では、少ない資金を有効に使うために、ブロックでは情報交換に徹して、各会がその情報を生かした会務運営を行っています。
この全国の事情も勉強していない人がたまたま日調連の役員となって、自分の地元だけのつもりで、簡単に事業をブロックに振られると、とても困ったことが起こります。

さて東北ブロック協議会の来年の事業計画では、以下の計画が承認されました。

1、認定調査士の将来像を考える座談会
2、ADR担当者会同(筆界特定を含む)
3、日本土地家屋調査士会連合会事業計画と連動する事業
4、新人研修会
5、調査士試験合格者のための開業ガイダンス

それにともなう平成24年度の東北ブロックの予算は、730万円で承認されました。

やりたい想いはたくさん有りますが、限られた予算と東北の復興の合間に動く限られた日程としては精一杯かと考えています。むしろ一つ一つの事業をどこまで魂を込めるかだと考えています。

事業計画5番目の「調査士試験合格者ための開業ガイダンス」は、今年1月14日に試行してみたものですが、受講者から合格者の開業に対する迷いが減ったという評価を得ました。そして実際にその後の入会者が増えました。
これが東北ブロック協議会の正式な行事となれば、合格者のためにもより良いことだと思います。



訃報ー東北ブロック名誉会長柴山武様ご令室

東北ブロック協議会名誉会長で日調連理事の柴山武様(福島会)のご令室柴山弘子様が7月13日にご逝去されました。
告別式等は下記のとおりです。
ご冥福をお祈り申し上げます。

<通夜>
日時:平成24年7月17日(火)午後6時より
場所:御山けんみん葬祭会館
   福島市御山字清水尻1−1
   電話 0120−144−566

<告別式>
日時:平成24年7月18日(水)午前11時より

場所:御山けんみん葬祭会館
   福島市御山字清水尻1−1
   電話 0120−144−566

<喪主>
柴山 武


*当ブログの訃報は、宮城会会員関係のものに限定していましたが、柴山様は他の会にも知人が多いので、お知らせします。

2012年7月11日水曜日

調査士会の代表とはトップのことではない

新人は自分が役員をすることを遠慮します。
「俺、そんなに偉くありませんから。」
謙遜のつもりでしょうか。

会長をはじめとする役員は、別に偉いのではありません。
土地家屋調査士の皆さんの考えや意見を集約して、土地家屋調査士のために動いているだけです。
土地家屋調査士会の会長は、その時代の調査士を代表していなければなりません。
もし本当に特別偉い人(そんな人がいるのなら)が会長をやっていたら、一般会員の気持ちは分からないでしょうね。

平成24年の第一線で、平成24年の各種手続きを自ら手がけて、現役の調査士として痛みや不安や希望を肌で感じていなければ、その人は土地家屋調査士のために実感を持って意見を語ることができるでしょうか。
そんな人たちに自分の未来を託しても良いのですか。その人は何も困っていないのですよ。

新人の皆さんは先輩より若い分、長くこの制度の中で生きて行かなければなりません。
皆さんには、土地家屋調査士の未来を語る権利だけでなく義務もあるのです。

自分達の未来は自分たちで創りましょう。
良いんです。遠慮しないでください。土地家屋調査士の大半が今困っているなら、困っている人の代表と考えて、困っているあなたが役員をやれば良いのです。

会長は土地家屋調査士の代表ですが、土地家屋調査士のトップではありません。
もし自分を土地家屋調査士のトップと言う会長がいたなら、全力で辞めて戴かなければなりません。








2012年7月9日月曜日

鮫島彩ベガルタに完全移籍

なでしこジャパン鮫島彩選手のベガルタ仙台レディースへの完全移籍が決定しました。

ベガルタ仙台オフィシャル
http://www.vegalta.co.jp/contents/news/press_release/2012/07/post-893.html

噂は以前から有ったのですが、正式に決まらないと落ち着かないものです。

フランス1部のモンペリエの引き留めを断り、ドイツ移籍という噂や、国内でも強豪チームのオファーが有りながらの現在2部の仙台入り決定ですから、とても嬉しいものです。

常盤木学園以来7年ぶりに仙台に帰ってきました。
更に応援が忙しくなりそうです。

えっ、これでは会長ブログじゃないって?
いいじゃないですか。嬉しいんだから。



2012年7月6日金曜日

微妙に生活できている専門家

最近、全国に講師でお伺いすることが多くなっています。
今日は石川会の研修会、明日は福井会の研修会にお伺いします。

いつも、全国の土地家屋調査士の皆さんとお会いすることで、頼もしい思いをしています。世の中に数多ある職業の中で、何故か土地家屋調査士を選んだ人達です。なにか共通する部分を感じられ、初対面でも親近感が湧くことが多いですね。いつも、どこに伺っても、昔から知り合いのようにお話ができ、オープンな話ができます。
これは他の士業と違って、商売敵と言っていたら仕事ができない業界だからということも言えるでしょうし、公嘱事業等でよく連携を組んで行動しているので、仲間意識ができることも理由の一つでしょう。

全国の土地家屋調査士は、不動産登記を通して、社会や制度に対する問題意識も同じようなものを持っているようです。

ただ違う部分も見られます。
地域経済のポテンシャルによって、土地家屋調査士業として普通の努力で生活できている地域と、かなりの努力をしないと生活して行けない地域が有り、その危機感と生活感の差が有るようです。
全国で議論していて、若干の違和感が有るとすれば、ここの問題を捉える真剣さが異なっていることが原因のようです。

何らかの問題はあるけれど、でもなんとか仕事が有って、微妙だけれども生活はできている人たちは、中途半端な満足にしがみつきます。
その収入が有るうちに、新しい未来への投資をすべきですが、そういった地域の人は、中途半端な満足感から、周囲に眼を向ける意識が低い人が多いようです。ギリギリでも微妙に生活ができていると、どうしてもそのポジションを守りたくなるのでしょう。

専門家の使命は、その変化する社会に即応した専門的知見が無ければならないはずなのに、現状のスキルにしがみつくことは困ったものです。時代の変化に対応できないのでは、専門家とは言えないと考えます。

むしろ、今制度の未来に危機感を持っている人たちの方が、新しい努力をしています。
それに対して微妙に生活できている人たちが、変化を嫌う意見を出します。

今は良くても、社会も経済も変わるのですから、制度も変わります。
明日、5年後、10年後、間違いなく、今のままではいられないでしょう。


以下は、ある他会の会員さんへ、私からの返事です。

〇〇さんの文面を見て、いつも思うのですが、〇〇さんの所属会とそのブロックは、今のところ、比較的恵まれた地域だと思います。
全国の動きはもっと厳しいです。
一番の問題は、そのまま行けるのならば問題意識が無くても良いのですが、今そういう社会では無いことなのです。
中途半端な満足感を持った会員の集まりが、いざというときの足手まといになります。

本当に満足しているのですか?
面倒な事から逃げているだけなのではないですか?
今だけを見ていないで、3年後5年後10年後を見て行動して欲しいと思います。






2012年7月5日木曜日

要介護探偵の事件簿

先日読んだ「さよならドビュッシー」の作者中山七里のスピンオフ作品です。
設定が凄いです。
なにしろ前作「さよならドビュッシー」の数年前を舞台に、「さよなら」で早めに死んでしまうキャラの濃い「おじいちゃん」、ヒロインの祖父香月玄太郎を主人公にしてしまう作品です。

この本は短編集で、要介護老人の香月玄太郎とその介護者綴喜みち子が活躍するミステリーです。まあこの老人、一代で財を築いた名証2部上場の会社の社長であり、筋が通っていなければ相手が誰でも罵倒するキャラで、足が不自由なだけで要介護とは言っても、まったく可哀想なタイプではありません。むしろ周りの人間が皆可哀想になってしまう程怒鳴り散らすのですから。
彼は、沈思黙考の安楽椅子探偵ではなく、車椅子探偵ですから、密室殺人の現場等にどんどん行ってしまうのです。

なんで探偵なんかって?本人は探偵をするつもりは無いのです。
自分の会社の分譲不動産で密室殺人が起こるのです。早く解決しないと残っている周りの分譲地が売れなくなるのですが、警察が頼りない。そこで自分が動き出すということになります。警察の上部にも顔が利くので、怖いものなしで現場に入って行きます。

この短編集の魅力は、もちろんミステリーの面白さではあるのですが、一番はこの香月玄太郎と綴喜みち子のキャラクターを楽しむ事だと思います。
そして前作を先に読んでいる人だけ分かる、フフッと思えるサービスもあります。

読み進めて行くうちに、どんどん香月玄太郎のファンになってしまいます。
もしこの短編が先に書かれたら、「さよならドビュッシー」で香月玄太郎を殺す事はできなかったかもしれないと思える程、生き生きと書かれています。

私にとっては、ミステリーとして前作程の衝撃は無かったですが、小説としては十分面白いと思いますし、このキャラクター設定は、サスペンスドラマのシリーズ物に十分なりそうな実力を持った設定だと思います。中山七里は力のある作家ですね。

またこの短編の各々のタイトルは、次のとおりです。

要介護探偵の冒険
要介護探偵の生還
要介護探偵の快走
要介護探偵と四つの署名
要介護探偵最後の挨拶

これだけでも、シャーロッキアンである私に対する挑戦で、読むしか無いでしょう。





2012年7月3日火曜日

異能のプロ集団

月刊登記情報608号(2012年7月)に寳金敏明先生が、「土地家屋調査士-異能のプロ集団」として、私たちの仕事を紹介してくださっています。

寶金先生は、東京法務局長や最高検察庁検事を歴任された方で、法的立場で、土地の境界についても各地で講演をされている先生です。宮城でも以前講演していただいています。

主な著書の『里道・水路・海浜[第4版]』(ぎょうせい)や、『境界の理論と実務』(日本加除出版)は、皆さんも読んでいるでしょう。

登記情報では以下の表現で土地家屋調査士を語ってくださいました。
是非読んでみてください。

土地家屋調査士は表示登記にかかる法的手続きを実践する法律実務家としての側面のほかに、筆界判定に要する各種の専門知識を総動員して境界の病理現象を把握し、その歪みの是正を図るという側面がある。
「境界・地図の医師」とでも評すべき職能である。

長年私たち業界を見ていただいている寳金先生の言葉です。
時に古文書や古地図等から古文書学の知識を用いて筆界情報を読み解き、その筆界が生成した時期における測量技術の精粗を測量学の知識を用いて判断し、空中写真をオルソ画像化したものを用いて3次元的に境界の位置を判定し、大震災の折には、ポテトチップ上になってしまった土地についても地理学・測量学の知識で境界情報の復元(変更)と地積更正(訂正)を実施する。
さらには公差を超えた高精度の筆界点を把握するために、最小二乗法を用いて地図情報と現況の乖離の有無を読み解き、あるいは公共基準点を超えた精度を持つ筆界測量の基準点を自ら創設し、その維持管理を行う・・・。
そのような広範かつ深い専門知識と技能が要求され、それを実行している類似同業は他に無く、文字どおりオンリーワン、異能のプロ集団と言えましょう。

土地家屋調査士法第3条の業務を誠実に担当してきた私たち業界が60年間蓄積した多くのノウハウは、今登記を超えて、様々なニーズに応えています。

しかし世間は登記の側面だけで土地家屋調査士を判断しがちです。

寶金先生は、そこを良く分析して、分かりやすく解説なされています。
これらは、机上だけで無く、実際に私たちの今の姿をよくご覧になっている寳金先生だから言える言葉でしょう。

その後に土地家屋調査士に行って欲しい仕事を挙げてくださっています。

筆界の認証、重要事項説明書における境界情報明記、筆界情報の管理・認証、集団和解もできない土地の解決・・・。

一度読んでみてください。
ここに近未来の土地家屋調査士が活躍できるニーズが的確に示してあります。
私たちはこれに応えなければなりません。

さて、近年土地家屋調査士は「喰えない資格」と言って、受験者が減っています。
それは、この職業を分かってないからです。
ドロップアウトしていく人はどの職業にもいます。
そのドロップアウトする人を見て喰えないというのか、実際に活躍している土地家屋調査士を見るのか、わずか数人の土地家屋調査士を見て、すべてを分かったつもりにならないで欲しいと思います。

資格試験では主に登記実務能力が問われ、上記のようなノウハウはどこにも要求されていません。でも土地家屋調査士は合格してから、皆このような能力を身に付けるのです。
その勉強を放棄して、目先の営業に走れば、絶対に先は見えています。
この資格は、実際に「勉強して本当に実力が付けば、喰えるようになる」という凄くわかりやすい資格でもあります。
その努力するつもりが無い人は、受験せずに会社員でいる事をお勧めします。
資格者を目指す人は実力の世界を望んでいたはずです。
土地家屋調査士でない寶金先生が、ここまで書いてくださっています。

新人達は、まずはこの「異能」を身に付けてください。
そして、皆で近未来を築き、更にその先を目指しましょう。


















2012年7月2日月曜日

東北の復興は日本全体の問題である


6月30日に兵庫県弁護士会主催の「シンポジウム 今被災地では何が求められているか〜復興支援のためになすべきこと」が神戸で開催されました。





各資格者やボランティア団体等様々な立場の方が参加されました。

まず被災地からの報告があり、その後写真の方々によるパネルディスカッションがあり、また各専門家から、その知見や立場による様々な意見の発表がありました。

以下このシンポジウムのアピールです。シンポジウムに出て来た意見は、これに集約されていると思います。

「東日本大震災の復興まちづくり支援に関するアピール」


 東日本大震災・原発事故の被災地は、被害があまりにも甚大・深刻であるだけでなく、地域によって事情やニーズが異なる上、生活再建に関する課題も山積している。
 こうした数々の難題を乗り越え、復興まちづくりに向けた歩みを進めるためには、被災者が主体となって取り組むことが第一であり、そして、これを支える国民的な支援活動が不可欠である。
 私たちは、被災地の復興まちづくりを支援するため、被災地の方々と、市民、行政、自治体職員、ボランティア、各分野の研究者・実務家などが協働し、全国の人・知恵・情報がつながり合ったネットワークを広げ、息長く支援していくことを決意した。
 今日この兵庫の地で、この旨をアピールする。
2012.6.30 震災復興支援シンポジウム参加者一同




私も被災地の資格者の一人として発表して来ました。

筆界移動と地図、建物、区分建物様々な論点をお話ししたかったのですが、短い時間でしたので、それらの問題提起だけをしてきました。

地籍に関する問題は、まだ被災地では顕在化していない問題です。復興計画が実際に動き始めれば、必ず現れる問題です。世間は問題が現れないと取り上げない風潮ですが、今のうちに議論する事が必要だと思います。

また他に伝えたいことがあります。

震災はそれぞれ違います。上記のアピールのとおり事情もニーズも違います。

専門家が現地を自分の眼で見ないで、ニュースや人伝えで得た情報だけで意見を言ってはいけません。阪神淡路大震災の際の知恵と経験は大切ですが、それだけでは東北は解決しません。専門家の発言は重いものです。

また、東北の復興は、東北だけの問題ではありません。日本全体の問題です。世界もこの復興にかける日本の力と姿勢を見ています。
これは、東北人だから言っているのではありません。
東北復興に10年も20年もかかっていたら、その間に日本のどこかで大震災が起こるかもしれません。家族に病人を抱えているところに、新たな病人が増える様なものだと理解しなければなりません。




2012年7月1日日曜日

さよならドビュッシー


私は出張で電車に昨日29日5時間半、本日30日に3時間半程乗っています。
一昨日も遅くまで用事があり、出張当日に慌ただしく出張準備をして、発車10分前に仙台駅に到着して、本を持って来なかったことに気がつきました。
これだけの出張だと大抵本を2冊程持って来ます。一册は勉強の本、もう一冊は暇つぶしの娯楽の本。急遽10分で本を探しました。

じっくり読み込む勉強の本を探す事は無理なので、娯楽本を探しました。私にとって、電車での娯楽の王道はミステリーです。何しろ目的の駅まで完全に読書時間が何時間何分と約束される電車は、犯人探しの思考を途中停止させられない環境としては最適です。

さて、何の予備知識も無く手に取ったのが「さよならドビュッシー」中山七里でした。
第8回「このミステリーがすごい!」大賞受賞と書いてあったし、もともと私の好きな音楽ジャンルが絡めば、ミステリーとして弱くてもまあ我慢できるかもと買いました。
森雅裕「モーツァルトは子守唄を歌わない」など、クラシック音楽とミステリーの融合は秀作が多いと考えたからです。

結論、大当たりでした。ミステリーとして上質。音楽の描写も秀逸、大変素晴らしかったです。

何不自由無い生活をして音楽学校に進む主人公が、突然の火災で資産家の祖父と仲良しの従姉妹を失い、自分も全身大火傷を負う。主人公の、指も満足に動かせないところからピアニストを目指しての壮絶な闘いと、それに不審な事件が絡む。

キャラクター設定が見事で、一人一人がよく描かれています。ハンディキャップを背負ったヒロインが頑張る姿と素晴らしいコーチ。私の世代にドンピシャのスポ根テイストも満載。
ミステリーが無くてもピアニスト物語としても十分読み応えが有るストーリーで、なおミステリーをさんざん読んでいる者も納得させる力のある上質なミステリーでした。

のだめカンタービレの成功は、単なるラブコメだけではなく音楽の描写に説得力が有ったからですし、このミステリーも音楽や演奏の描写の部分はまったく同じ事が言えると思いました。

明日も6時間以上の電車移動です。中山七里の次作「おやすみラフマニノフ」をなんとか探して電車に乗りたいと思います。