2012年5月22日火曜日

Bricolage ブリコラージュ

ブリコラージュ(Bricolage)は、「寄せ集めて自分で作る」「ものを自分で修繕する」こと。「器用仕事」とも訳される。元来はフランス語で、「繕う」「ごまかす」を意味するフランス語の動詞 "bricoler" に由来する。

ブリコラージュは、理論や設計図に基づいて物を作る「エンジニアリング」とは対照的なもので、その場で手に入るものを寄せ集め、それらを部品として何が作れるか試行錯誤しながら、最終的に新しい物を作ることである。

ブリコラージュする職人などの人物を「ブリコルール」(bricoleur)という。ブリコルールは既にある物を寄せ集めて物を作る人であり、創造性と機智が必要とされる。また雑多な物や情報などを集めて組み合わせ、その本来の用途とは違う用途のために使う物や情報を生み出す人である。端切れから日用品を作り出す世界各国の普通の人々から、情報システムを組み立てる技術者、その場にあるものをうまく使ってピンチを脱するフィクションや神話の登場人物まで、ブリコルールとされる人々の幅は広い。(Wikipedia)



我がベガルタ仙台で言えば、今の手倉森監督はエンジニアリング的なチーム作りでしょう。
自分の理想のチームと戦い方が有り、それに合う選手を集めるやり方ですね。
どんな一流選手が来ても、そのやり方に合わない選手は試合に使わないという方法です。
その手倉森サッカーができそうな選手を5年かけて少しずつ取ってきて、今のチームができています。正確にはコーチ時代も含めた9年でしょうか。
ベースがしっかりして、ちょっとぐらいでは崩れないスタイルを身につけました。
私たちも見ていて安心なチームです。

我がベガルタ仙台を、2001年にJ1に昇格させた清水秀彦監督は、まさにブリコラージュ的なチーム作りでしょう。
彼は名門日産自動車(現横浜マリノス)の監督をして、天皇杯を制したこともある監督です。一流選手も見てきました。
しかし、J2のベガルタ仙台を指揮するときに、与えられた選手で、どうすれば勝てるかを考えていました。
この選手が何ができるかを把握して、結果的には自分の理想のサッカーではないけれど、今目先の勝つ方法を見つけてチームを作っていました。
この件については2010年1月31日「勝負師清水秀彦」で書かせて戴きました。

前者の手倉森監督の方法は結果が出るまでに、とても時間がかかりました。しかし、完成に近づけば、チームは崩れません。この方法は、結果が出るまでに時間がかかるので、采配に疑問を持たれ、途中解任される可能性があります。
よほど周りが理解しないと、志半ばで終わってしまいます。
現にそのような動きも3年前に有りましたが、当時はJ2だったことも幸いし、なんとか周りを説得して監督に居座り、今日の成功があります。
彼は筋の通ったプロフェッショナルな監督です。

後者の清水監督の方法は、今日戦って今日勝つことを求められているチームには効果的です。
これも成績が悪ければ契約途中でも解雇されるトップチームの監督としての経歴を重ねてきた清水監督だからできたことでしょう。
とにかく現在の材料だけで、旨い料理を創らせたら、清水監督はとても良い仕事をします。
もちろん、自分の理想とするチーム作りは、以前別の環境でしっかりやっていました。
彼もとてもプロフェッショナルな監督です。


世の中の大半の仕組みや組織はブリコラージュです。

もともと選ばれたエンジニアリングのような人や物の組み合わせではなく、大抵は「このメンバーでこの材料で」何かをやらなければならないことが多いのです。

土地家屋調査士会のような組織は、まさにブリコラージュです。
素材そのものが様々な出身を持ち、個性的な能力を持っています。
ブリコラージュの一番大切なことは、その素材の把握と、本来持っている役割と違う新しい役割ができないか、見極めることです。

何かの分野で標準的なことができない人を、ダメだと決めつけずに、別の役割なら一番できるという能力を捜してやることです。また自分でも他の人が持っていない能力を考えることです。
全員がフォワードをやれるわけではないのですから。

とても難しいことですが、ブリコラージュには、予定調和的なものを越えた新しい可能性も秘めています。
我々が本気で自らの能力を棚卸しし、勝てるチーム作りを考えれば、とても強いチームができそうです。
御託を並べて動かない人が多い業界ですが、理想を述べる前に、今目の前の事柄に勝たなければなりません。
おそらくベガルタ仙台が手倉森監督の結果を待ってくれたようには、世間は待ってくれないはずです。
まずは勝って、勝ち癖を付け、余裕ができた中で盤石なエンジニアリングを考えて行くべきと思います。