2011年6月29日水曜日

ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座ー井沢元彦


海外のあらゆる文学・美術に触れる度に自分の宗教的知識の脆弱制を感じます。
これらの芸術の世界に留まらず、世界の政治も経済も、この宗教の背景を理解しないと把握できません。
学生の頃、宗教関係の本をたくさん読みましたが、社会的な経験も知識も無い頃なので、結局ほとんど理解できていませんでした。特に哲学に興味を持っていた生意気な時期ですので、わざわざ分かり難いようなものを選んで読んだ気がしています。

ユダヤ・キリスト・イスラム集中講座 井沢元彦
〜宗教紛争・テロはなぜ終わらないのか

井沢元彦氏が2004年に出した本です。
この本の内容については、以前井沢元彦氏本人の講演を聴いたことがあります。
その時は大変分かりやすく宗教を解説していました。講演だけでも内容が整理されていて良く分かったのですが、一度この本も読もうと思っていました。
しかし何故か本屋に行くと買い忘れていた本でした。
先日偶然本屋で見つけたので、懐かしく読んでみました。
この本は、このユダヤ教・キリスト教・イスラム教という3つの宗教を解説した本です。
宗教学的な立場ではなく、各々の成り立ちであったり、教義であったり、日本人にとって理解しづらい部分を解説した本です。
宗教者が書いたのではなく、元ジャーナリストととしての視点で書いてある事にこの本の存在価値があります。日本人による日本人のための宗教解説本です。

第1部では、もともと一神教として、同じ創造主を信じるこの3つの宗教が、唯一の神エホバ/アッラーを、救世主としてのイエスを、予言者としてのムハンマドをどう位置づけ、どう考えるかを、解説しています。

第2部では、それぞれの言い分として、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教の各代弁者との
直接対談をして、現代のお互いの立場を浮き彫りにしていました。
この部分は特に聞き難い事もしっかりと聞いています。
それに各宗教の第一人者が答えています。この答えが興味深いですね。この本の中心となる部分です。

この3つの宗教の関係などに興味が有れば、読んでおいても良い本だと思います。
ちなみに池上彰著「池上彰の講義の時間 高校生からわかるイスラム世界」もイスラムの一冊目としては、分かり易い本です。

日本人は世界でも大変珍しい多神教です。それもかなり緩い宗教観です。まったく宗教を認めないという立場でもなく、あらゆるものを包含して、「祭り」にできる民族です。
日本人は「世界の宗教対立緩和のお役に立てる数少ない立場」であると、改めて思いました。